買い物をすませた近藤が、さあ屯所へ帰ろうと身を翻したときに団子を頬張っている沖田とばったり出くわした。あれおまえいまは見廻りの時間じゃなかったっけと訊ねると、いやちょっと自主休憩中でさァと沖田が飄々と嘯くのでなにが自主休憩だと近藤は苦笑した。抱えている重たい買い物袋を揺らすと、すっかり団子を食べつくした沖田が不思議そうに見つめてくる。
「それ、なんです」
「夏みかんと梅干」
怪訝なまなざしにもう一度苦笑して、今朝の土方とのやりとりを一部聞かせてやった。酸っぱいものといわれてもこのくらいのものしか思いつかなかったのだ。ついでにマヨネーズも大サービスでつけてやった。聞き終えると沖田はふんと鼻を鳴らす。
「ただの夏バテなんじゃないですかィ。ほら、マヨばっか食ってるから栄養偏りまくってるに決まってらァ。近藤さん、あんまり甘やかすとあいつ、つけあがりますぜ」
「でも、それで倒れられても困るしなァ。それに、頼られるのだってイヤじゃないぞ」
近藤は袋のなかから夏みかんを一個取り出し、おまえも食えと沖田の手のひらに握りこませた。すると沖田はしばらくみかんを見つめたあと、
「じゃあ近藤さん、俺は特上うなぎでイイでさァ」
「エッ?」
「なんです、夏バテで俺が倒れてもイイんですかィ」
土方さんはのうのうと部屋で寛いでるってェのに俺はこき使われてさらには昼飯も抜きっていうことなんですねアアこんなひどい大将がいたもんだ、つらつらとよどみなくしゃべりつづける沖田に近藤はあーあーそうじゃなくって、と冷や汗をかきながら買い物袋を抱えなおしてうなぎ屋へ足を向けた。