猫のきまぐれ


 翌朝には熱は下がり、朝のミーティングから顔をだすことができた。近藤さんに「もうだいじょうぶなのか」と声をかけられたとき、「そんなに俺にふせっていてほしいのかよ」と言いかえしたら、近藤さんが真面目な顔をして「そんなわけないだろう」と言うので俺のほうが困惑してしまった。つづけられた言葉に、さらに度肝を抜かれることになる。
「でも、昨日のおまえはかわいかったぞ」
「ぐっ……」
 なにを言いだすんだ、このひとは! 飲みかけていた茶をあやうく噴き出してしまいそうになりながら、俺は思い切りしかめ面をしてみせた。すると近藤さんも「あ」と目を丸くして、自分の失言を悔いるように俺から視線をそらした。
「ちがうぞ、めずらしくおまえが、おとなしく俺に看病されてたから」
「知ってる」
 なにがちがうのかとかなにが知っているのかよくわからないまま、ただ気まずい雰囲気をつくりたくないだけで俺は言葉をつむいでいく。
「だって俺、アンタだからおとなしく看病されてたンだからな」
 無意識とは怖ろしいものだ。
 自分も失言してしまったのだと気づいたのは、見る間に紅潮していく近藤さんの顔を見たときだった。

20080201
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