治りかけの傷
次の日、高熱を出した俺は起きあがることすらままならなくなっていた。見舞いにきてくれた近藤さんに、ほら見たことかといったふうに見下ろされてぐうの音も出なかった。
「まァ、せっかくだからゆっくり休め」
近藤さんの手のひらが俺の額を覆う。布団で寝ていたのでは避けることもできない。近藤さんにされるがまま、布団で顔を半分隠した状態で俺はひんやりとした感触に思わずうっとりと目を細めてしまう。
「よしよし、ゆっくり寝てろー」
なだめるみたいな口調、見あげると近藤さんがにんまりと笑っている。
「……アンタ、ぜってー俺のこと、子ども扱いしてるだろ」
「ンなことねーぞ」
そう言いながらも近藤さんはどこかうれしそうな表情を隠しきれていなかった。俺を看病するのがそんなにうれしいのだろうか。俺はあきずに邪推して、ふたたび自己嫌悪に陥った。日々それのくりかえしだ。
「……なんか、最近ずっとアンタに迷惑かけてばっか」
「俺はうれしいけどなァ」
うれしい。近藤さんの口から直接聞くことができて、俺はにわかに舞いあがってしまった。
「じゃあ、ずっと、……これからもたくさん、アンタに迷惑、かけちまうかも」
治るまでアンタがずっと俺のことを考えてくれるのなら、そばにいてくれるのなら、治りかけの傷だって俺は自身でえぐってしまうかもしれない。
こんな馬鹿げたことを口走ってしまったのは熱のせいだろう。「いいよ」という近藤さんの声が聞こえてきたのも、熱が聞かせた幻聴だったのだろうか。確かめるまえに、俺は額に添えられた手のひらの心地好さに寝入ってしまったので、結局問いかえすこともできなかった。
20080131
title by pick up days