ないものねだり
酒を舐めるとじんと舌が痺れた。どうしたんだよ、この酒。とっつぁんにもらったんだ、すげー高いヤツみてえだぞ。
ふん、いつも飲んでるヤツのほうが美味い気がする。安酒に慣れちまってるからなァ。
近藤が豪快に笑うのを、土方はちびちびと酒を飲みながら眺める。すると近藤は土方の視線に気づき、お、と顔をあげた。
「いつものヤツにするか?」
「いや、これでいい」
土方は静かにかぶりを振った。グラスに入った琥珀色の液体を見つめ、それから近藤のほうへ視線を移す。
彼は至極美味そうに酒を飲んでいる。目許がうっすらと赤くなっていた。いつもより酔いが回るのがはやいようだ。
近藤さん、と土方は低くつぶやいた。うん、と近藤が素直に頷く。
「俺、やっぱりこれいらねーや」
「じゃあ、ちがう酒を」
「それがいい」
土方は近藤の持つグラスを指差した。それがいい。土方はふたたび繰り返した。
まっすぐ近藤の眼を見つめながら、急速に酔いはじめていくのを実感した。
20061209
title by rebellion