温い水で溺死
奢ってやるという言葉に遠慮せず甘えた結果が、ひとりじゃ歩けなくなっちまうくらいの、泥酔。
こんくらい平気だ。ひとりで歩ける。気丈に言ってみたものの、言葉とは裏腹に足元が覚束ない。
しょうがねェなあ、トシは。なんて困った口調で言いながら近藤さんは俺を負ぶさって夜道を歩いていた。
ごめんと口癖のように繰り返して言ったのを憶えている。
そのたびに近藤さんが気にするなと言ってくれたのを憶えている。
あたたかい体温を、憶えている。
暗くてほとんど人通りのないなかで、近藤さんがぼそりとつぶやいたのも。
「……そうか、すきな娘、いるのか」
その声色がなんだか悄然として聞こえたのは、俺の想いが生み出した幻聴だったんだろうか。
近藤さんの背中はまるでぬるま湯につかっているみたいにひどく心地が好くて、このまま死んでしまえたらと切に願ったのを、憶えている。
20061124
title by pick up days