缶ビール1本


 近藤の部屋の前で声をかけたが返事はない。 電気はついているのだからいるはずだ、それとも単に少し席を外しているだけだろうか。
 土方は首をかしげつつ、思い切って障子に手をかけ開けた。
 案の定、近藤はいた。しかし彼はどうやら眠っているらしい。 布団も敷かず、畳の上に大の字になっている様に土方は思わず瞠目し、苦笑を零した。
 見やった机の上には、缶ビールが一本転がっていた。これが原因だろうか。しかし――。
「どうしてコレだけで酔えるかな」
 温度の感じられない缶を手にとって、左右に振ってみる。なんの手ごたえもない、空っぽだ。
「アンタ、そんなに弱かったッけ」
 なァ、と答えを期待することなく近藤を振り向いた土方は、予想に反してすぐさま返ってきた言葉に思わず息を飲み込んだ。
「介抱してくンないの?」
「……ばか」
 悪戯に目を輝かせる近藤の表情に酔いのかけらも見えないが、笑って応える余裕くらい土方にも持ち合わせている。
「言われなくてもしてやるよ」
 そうして重ねた唇に、酔う振りをすることだって。

20061009
title by pick up days