雄弁な皮膚


 寝返りを打ったとき、ふと視線を感じて瞼を開ければジィッとこちらを見つめている男と目があった。オゥ、と素っ頓狂な声をあげてしまった近藤はそこで一気に目が覚める。暗闇で、ギラギラ輝くふたつの眼に見つめられているのは心臓によくない。
「起きてたのか」
 声をかけても、土方は布団のなかでぴくりとも動かぬままただ一度だけまばたきをする。
 外はまだ暗く夜も明けていない。寝ついたのはおそらく、日付がかわってから。だからきっと、それからまだ数時間もたっていないにちがいない。
 彼は一睡もしていないのだろうか。近藤が重ねて問うより先に、土方は視線をそらす。
「だって、寝るのがもったいねェ」
 せっかくひと晩じゅう、アンタのことを見つめていられるってェのに。ほんのすこしおどけた口調でささやいて、伏せられた瞳が真意をひた隠そうとする。
「……べつに、いまじゃなくても」
 顔ならいつだって見れるだろう、明日だって、明後日だって。夜じゃなくても、朝だって、昼だって。
 そう近藤が言うと、土方はわずかに眉をよせ、そうだけど、そうじゃなくてと口ごもる。
「……もういい」
 やがて口をつぐんで、かたく目をつむってしまう。名前を呼んでも返答はないから焦れた近藤は土方のきつく寄せられた眉間にそうっとふれてみた。ぴくりとかすかに震える感触が指先に直截に伝わってきて、アア今度は俺が眠れなくなってしまいそうだとそのぬくもりから手が離せなくなる。


20071216