血まみれハニー


 今日はひどくしてほしいなと言ったら、最初は乗り気じゃなかった近藤さんもふざけあっているうちに盛り上がってきたのかだんだん目の色をかえてきた。
 俺の両腕は縛られからだの自由を奪われている。着物の帯が巻かれた手首の皮膚は摩擦によりすれていたが、自分でほどこうとしたわけではなく無意識にからだをよじらせているうちに傷ついてしまっただけだ。けっこう動いているだろうにまったくほどけるようすはないのだから、近藤さんも「エーほんとにやるの?」と渋ったそぶりを見せておきながらキツク結んでンじゃねェかと苦笑が漏れる。
「どうせだったらとことんやったほうがイイだろう?」
 両足を大きく開いてみっともない格好をしている俺のなかをガンガン突きあげながら、近藤さんが俺の耳朶に接吻けてそう囁くので俺は思わずギクリ。もしかすると声に出して言ってしまったのだろうかと一瞬訝しんだものの、いまの俺はろくにしゃべれる余裕はないからそれはまずない。その証拠に俺は喘ぎすぎてひりついた喉を鳴らしながら、こくこくとうなずきかえすことしかできないのだ。
 “とことん”という言葉どおり近藤さんはイヤってほど俺を翻弄し身震いするほどの快感を与えてくれた。そのときの俺の気持ちといったら、「アー! 畜生、もうイクッ!」の一言に尽きる。詳細は割愛。(もったいなくてだれが言えるか!)
 というわけで意識半分ぶっ飛ばしながら、それでもしつこく本日何度目かの射精をしようかというときになって、俺は無性に近藤さんにギューッと抱きすがりたくなった。不自由な両腕はあいかわらず背中の下、からだを揺さぶられるたびにギシギシ軋んで痛い。もう限界、俺は近藤さんを上目に見やってかすれた声でその名を呼んだ。
「近藤さん……」
「うん」
「もう……」
「うん」
 俺がなにかを言うたびに近藤さんはうなずいて、そのこめかみから熱い汗を俺の鎖骨のうえに滴らせ落とす。あ、と思ったときには近藤さんの手は俺の背中にまわり、わずかな力をこめて俺を起きあがらせた。むろんつながった状態のまま、俺は近藤さんの膝にまたがりいましがたの衝撃であやうく達してしまいそうになっていたが、そのまえに俺を拘束していた細長い布を近藤さんが意外にも器用な手つきでほどいてくれたので、ようやく、存分に近藤さんに抱きつくことができるようになったのだった。
 なんて絶妙なタイミング!
 近藤さんの汗と俺の精液が混じり合ったのはそれからすぐのこと。
 ああ俺はこんなに近藤さんに求められてなんて幸せな奴だ、と手首に滲んだ血をぬるりとした熱い舌で舐めとられながら幸福を噛みしめるのである。


20071119