早朝、迫りくるある種の危機
暑いばかりの夏が去り、肌寒さを感じる秋が訪れる。特に気温の低い朝は布団から出るのがつらい。
布団を頭まですっぽりとかぶった近藤は、はやく起きなければなと思いながらもなかなか実行に移すことができないでいた。
理由はふたつ。
先に述べた寒さのほかに、同衾する男の存在が近藤をずるずると布団のなかにとどまらせていた。
腕のなかで眠る男――土方を見つめながら、近藤はひっそりとため息を吐き出す。
(厠に行きてェ……)
密着していた身体をそろりそろりと離し、下半身を土方から遠ざけようと腰を引いた。
朝の生理現象。
俺もまだまだ若いな、と呑気に苦笑している場合ではない。早急に処理しなければ……。近藤は、土方の腰にまわした腕をそっと持ち上げた。起こさぬよう、息を詰めてゆっくりと。
無事かぶっていた布団を剥いだときには、不自然な体勢に腕がつりそうなほどだった。
(よし……)
安堵の吐息を漏らし、布団から這い出そうとした。その腕を、後方から引っ張られる。はっとして振り向くと、寝惚け眼が不機嫌そうに細められていた。寝起きにもかかわらず、引き寄せる力は思いのほか強い。
「どこ行くンだ……」
掠れた声に訊ねられ、前のめりになりながら「厠だ」と近藤は正直に答えた。だから離せと言うのに、土方はふたたび瞼を落とし、
「じゃあおれも行く……」
「って、トシ!」
いっしょに行くと言って手を離さないくせに、起きるそぶりを見せない土方に近藤は焦る。
「行かないンだったら離せって、俺漏れちゃうから!」
「じゃあおれのなかですれば……」
「ト、トシッ!」
土方のうわ言に近藤はたいそう狼狽えた。まったくなんてことを! だが、いまの台詞に下半身を直撃されたのも事実である。
言葉をなくしたままでいると、そんな近藤のようすを見た土方は先刻までの不機嫌さをすっかり消して、くつりと笑ったのだった。
「俺から離れようなんざ、百万年はえーよ」
20071106