暑い夜に御用心


 蒸し暑くて眠れない。熱帯夜はこれだから厭だ。
 土方は、今夜もう何度目になるかわからない寝返りを三度打った。伸ばした腕に、こつんとあたるものがある。広い背中だ。土方はそれをじっと見つめたあと、ずるずると身を寄せぴたりとくっついた。暑さが増した。だが、不思議と離れる気にはならない。
「う……トシくんあっつい……」
 もごもごと口ごもった背中が動いた。起きていたのか。土方は驚いて顔をあげた。振り向くだろうかと期待したが、背を丸めた近藤は一向にこちらを向いてはくれない。つまらなさそうに鼻を鳴らした土方は、身を乗り出して近藤の首筋に噛みついてやった。うぐ、とくぐもった声があがって、土方はくつりと笑った。
「どうした、蚊にでも刺された?」
 涼しい顔で訊ねると、ようやく振り向いた近藤が恨めしげに見つめてくる。
「もっと厄介なモンに刺されたかも」


20070703