密室について語る小一時間
土方はことさら真面目な顔をして語る。
「屯所のなかじゃア、あんまりふたりっきりになれる場所ってないと思うんだ」
「んん、そっかな」
「だから近藤さん。俺たちはいますぐ隠れ家的部屋を造るべきだと思う。そんなでっかいところじゃなくてイイんだ。ちいさな屋敷に、俺たちふたりっきり。最低限必要なもの……寝具ぐらいかな、は持ち込んで」
「んんー、隠れ家ねェ」
気のない近藤の口ぶりに、土方は片眉をつりあげた。
「聞いてンの、近藤さん」
「聞いてますけどトシくん。だからってこんなところで話し合わなくても」
「聞いてねえじゃねーか! いま現在ここが一番安全で安心できるって言ってんだよ!」
そう、この場所でしか完全に近藤とふたりきりになれることはないのだ。
近藤の部屋も自分の部屋も、隊士がうっかり障子を開けてしまえるので密室にはなりえない。
それよりももっと、ひと目につかず、近藤とゆっくり抱き合える空間が欲しかった。たとえそれが窮屈な場所であったとしてもだ。
「なんだよ近藤さん、アンタは隠れ家よりもここでしたいってのか? まあ俺は別にどこでもイイけど……」
くちびるを尖らせる土方のこめかみからつぅ、と一滴の汗が伝った。それに気づいたのか、近藤の指が汗を拭う。見れば近藤も同じように汗だくだ。この暑さでは仕方がなかった。
「でもなァ、トシ」
近藤がうーんと唸る。
「ここじゃあんまり動けねーぞ」
その一言で近藤に抱きついていた土方はぱっと離れた。
「よし、外出るか!」
土方はぴしゃァん! と勢いよく襖を開けると押入れから部屋のなかへと飛び出した。
20070610