「近藤さん、いかがわしいこと、しよう」
夕立が上がり青く塗り込められた空を眺めながら土方は呟く。
後ろでちいさく息を呑む気配がしたが、振り向くことはせず視界の隅に現れた灰色の雲にしばし気をとられた。
「――じゃなかったら」
縁側に両足を下ろし濡れた砂利の感触を足の裏で受け入れる。硬い粒状のものが素足の下でじゃりじゃりと音をたてるのを愉しげに聞いていた。
「アンタの腕がほしいな」
それを抱いて眠りたいのだと土方はうっとりとまなざしを細めて続ける。
「指いっぽんでもいい。……爪、だけでもいいから」
俺だけのアンタがほしい。ほんとうはぜんぶほしいけど、それはいくらなんでも無理だろ? 湿った空気のなかで土方は乾いた笑いを漏らす。
すっかり砂利のついてしまった片足を持ち上げて覗き込み、無様なようすに嘆息した。
そのまま板敷きの上にのせてしまおうとからだを反転させたところで、宙に浮いた足首をぎゅうと強い力でとらえられた。
それには土方が驚いた。
近藤さん、と掠れた声が揺れて落ちる。昏々と広がりゆく鈍色の雲からは再度雨が降り始めた。
「いけないことをしようか」
耳朶にふれるかふれないかのところで囁かれる。土方は泣いてしまいそうになりながら何度も頷き返した。
そのたびに足の裏についていた砂利が、ぱらぱらと乾いた音をたてて落ちていった。
泥濘に浸かる太陽
20070518