禁欲サタデー
ずいぶんと酔っ払って帰ってきた近藤さんは、俺の部屋に入ってくるなり敷いてあった布団に倒れ込んだ。
机の前で胡坐をかいて煙草を吸っていた俺は、その勢いに思わず灰を落としそうになった。
「何してんだよ、近藤さん」
灰皿に煙草を押しつけて布団まで四つん這いで向かい、俯せになっている近藤さんの顔を覗き込めば俺の心配は吹っ飛んだ。
まるで子どもみたいな顔をして眠ってやがる。呑気な面だ。
「近藤さん、アンタがいると俺、寝れねえんだけど」
布団のまんなかで左右に両腕広げて寝られては、俺が眠るスペースなんてこれっぽっちも残っちゃいねえ。
「アンタがどかねーんなら、上に乗っちまうぞ」
頬をつまんでみても起きる気配はなし。仕方ないからほんとうに乗っかってしまおうと企んだところで、近藤さんが何やらつぶやいているのに気がついた。
「んー……なんかトシのにおいがする」
半分寝ぼけた声に、俺は近藤さんの口許に顔を寄せたまましばらく硬直して動けずにいた。
近藤さんのいびきが聞こえてきたのを機にぎくしゃくとからだを動かし、ふたたび机の前に鎮座する。
俺のにおいがするって、俺の布団なんだからあたりまえじゃねえか。
それにここは俺の部屋、アンタが飛び込んできてそんなリラックスしてひとりで勝手に眠るのもおかしな話だ。
第一、何よりも。
「ここにホンモノがいるの、知ってんのかな」
20070512