愛の世界


 そこは近藤と自分しかいない世界だった。
 ほかには誰もいない、正真正銘の、ふたりきりの世界。
 だから、いつもみたいにひと目を憚らずに、腕を組んだりキスをしたりセックスだってできる。一日中、好きなだけ抱き合っていられるのだ。
 けれども、ほんとうは、土方だって気づいていたのだ。 この世界がほんものではないことに。にせものであることくらい、土方はとうに知っていた。
 だが、それから目をそらす。
 土方が見つめる先にいるのは、いつだって近藤だけだ。
「近藤さん、だいすき」
 きつく、彼の首にしがみつく。
「すき、だいすき、近藤さん、すき……」
 そこは、近藤と自分しかいない世界だった。
 だから近藤だって、自分のことだけを見つめてくれるのだと土方は信じて疑わず、その偽りの世界にとらわれたままでいるのだ。


20070506