隠し子発覚/つきまとう葛藤/救いようのない物語


斬りたい遺伝子


 刺殺斬殺絞殺撲殺毒殺溺殺焼殺射殺窒息殺殺殺殺殺。
 一番手っ取り早いのは絞首だろう。
 細い喉元を手のひらで覆い、ほんのわずかに力を込め絞めつけるだけですむ。
 骨が折れる、その感触がわずらわしく手のひらに残るかもしれない。だが、すぐに忘れるだろう。たいしたことではない。 土方にとっては些細な出来事にすぎないのだ。
(さアどうする)
 よりどりみどりに舌なめずりをし、かたわらでなにも知らずに眠るちいさな存在へと視線を落とす。
 伸ばした手が、朱色の頬を撫でつけた。すべすべの心地好い手触りにより、闇色の衝動が如実に現れる。
 刺殺斬殺絞殺撲殺毒殺溺殺焼殺射殺窒息殺殺殺殺殺。
 もしくは、斬殺もいいかもしれない。
 侍らしくひと斬り、刀を一度振ればそれですむ。しかしそれでは刃先に血がこびりついてしまうだろう。 いっそ禍々しいその血が己に降り注ぐなんてもってのほかだ。
 土方はかぶりを振る。無意識に額をぬぐった手の甲が湿っていた。微かな声が鼓膜を揺るがす。 赤子はいつの間にか目を覚まし、ジッと土方を見上げていた。
 真ん丸い瞳はあまりに無垢だ。思わず視線をそらし、きつく目を瞑ってしまいたくなるほどの。
(見透かされている)
 そんなわけがないというのに、そういうふうな思考はとどまらない。
 他人の命を奪うことなど、土方にとってはなんの造作もないことだ。
 それなのに。
「……頼むから俺たちの前から消えてくれ」
 無条件であのひとのそばにいられるだなんて、卑怯だよ。

20070415