隠し子発覚/みじめに笑う/救いようのない物語
汝の敵を愛せるか
(どうせ俺は子が生めるからだじゃア、ない)
幾度となく思案にくれ、そうしてそのたびに暗鬱の渦へと引き込まれる。とりとめのない空想は自身を追い詰めるだけだというのに。
土方は細くため息を吐き出し、身じろごうとしてそれをやめた。
腕に抱いた存在がずっしりと重い。ミルクを飲んだばかりの赤子はいまは昼寝に徹していた。
まったく呑気なものだ。すやすやと眠るようすはひどく穏やかであったが、土方の内心はそれとは正反対のところにいた。
思えばほとんど泣くことのない赤ん坊である。目が合えばにっこりと笑う、その笑顔に土方はしかし三度身をすくませていた。
(あのひとにそっくりだ)
自分には到底真似できない、なんの濁りもない笑顔。土方はただの一度も笑顔を赤子に向けたことはなかった。笑顔を作りだすこと自体、不可能なのだ。
このちいさな存在に脅かされている。怖れている。認めたくはないがそれが事実だ。
(どうせ俺は)
口許に浮かぶのは自嘲しかない。無意識にうなだれたものの、ほのかな甘いミルクの香りがつよく鼻をついて、たまらず眉根を寄せた。
20070414