ヒステリック☆ベイビー


 喧嘩をした。
 といっても一方的に俺ががなりだてて喚いたあげく、「ひとりで帰る」なんて言って車から飛び出して来ただけだ。 俺も大概メロドラマの見すぎかもしれない。
 あー、ちくしょう。せっかく久々のデートだったっていうのに! しかもどこだここ。 あたりを見回すがもちろん見覚えのない建物ばかりが目につくだけだ。真選組副長が路頭に迷うなんざいただけねえ。
 無事に屯所に帰れたとしても、あのひとにあわす顔がない。だったらこのまま路頭に迷ったほうがいいのかもしれねえな。
 ぼんやりと暗い夜道で佇んでいると、背後でクラクションが鳴った。 気がつけば俺のそばにまで近づいてきていた車のドアが開き、なかからにょきっと腕が伸びてきた。 その手に捕らえられ、俺は車内に引きずり込まれた。
 手荒い所作なのに安心するのは、俺を包み込むあったかい腕のせい。 背後から抱きしめられたまま見上げれば、にやりと笑うひとと目が合った。
「誘拐成功」
 なにそれ俺って誘拐されちまったの? ほんとばかだな。そんなことしなくても俺はとっくにアンタに捕らえられているんだぜ。
「じゃあもう離すなよ」
「離さねェよ」
 ああ、もしかして俺はまだ、ドラマを見ているのかもしれない!


20070408