甘い殺意
なんか口のなか痛い。
思わずぼやけば、「虫歯か?」と目を輝かせて近藤さんがすぐさま反応する。
「ちげーよ、口内炎」
右頬を押さえて答えると、ちぇ、と顔をしかめて残念そうな顔を浮かべているように見えるのはけっして、俺の気のせいだけじゃないはず。
たぶんあれだ、こないだのことを根に持ってるに決まってる。虫歯になった近藤さんを、無理やり歯医者に連れて行ったときのことをだ。
「どれトシ、あーんしてみろ」
「……は、あ?」
両の手のひらでぐいと両頬をつかまれる。無理やり上を向かされて、ほらはやく、って甘い声で促されても、開けられるわけなんて、ねーだろうが!
「……セクハラ、だ」
それだけなんとかつぶやいて、抵抗の意を込めてくちびるを噛みしめたけどそれはまったくの無意味だった。
やにわに近藤さんのかおが近づいてくる。そうして息をする間もなくくちびる同士がぶつかって、すっかり油断した俺はうっかり口を開けてしまって。
それからあとは、もう。
20070403