甘美な誘いは屑箱に
は、と大きく息を吐き出した。身体が波打ち、揺れたのを機に土方は覚醒する。
夢を見ていたようだ。二度と見たくはない、悪夢である。
全身におびただしい量の汗をかいていた。衣類が素肌にくっつく、その心地の悪さにいっそう顔がしかめられる。
土方はいま、近藤の胸に抱かれていた。太い両腕に、守られているみたいに抱きしめられている。
目覚めた土方に気づいた近藤が、目を細めて土方を見下ろした。
「怖い夢でも見たか?」
「ああ」
土方は瞬きもせずに近藤を見上げた。
「アンタがいなくなっちまう夢」
近藤が困ったふうに笑うのを見届けてから、土方はようやく目を伏せ、きゅっとくちびるを噛みしめた。
近藤の指が下肢をまさぐり、寝衣の合わせ目から内へと侵入してきたからだ。
やわらかく自身を包み込まれ、声を出してしまわぬようにと近藤の胸元に額を押しつける。
我慢しなくてもいいよと温かな声で促されたけれど、かすかにかぶりを振って、それに否と応えてしまう。
必死に、堪えようとはする。
けれどもやがて、すすり泣くみたいなあえかな吐息が絶え間なくこぼれはじめ、そうしてついに、あ、とちいさく声をあげて土方は吐精した。
「イッた?」
近藤が茶目を言う。土方は、わかってるくせにと頬を上気させて不貞腐れた。
手のひらに溢れた土方の精を、近藤が黙ってティッシュで拭う。そのさまを見ていたくなくて、土方はもそもそと布団のなかにもぐり込んだ。
「……近藤さ」
「おやすみ、トシ」
口を開けば、頭上から近藤の声が降ってくる。有無を言わさぬ接吻けをくちびるに受け、土方は眦が熱くなるのを感じた。
出張前夜、自室にて。
20070326