0時きっかりに近藤さんが俺の部屋にやって来ることになっている。
俺は何度も時計を見てはそわそわし、時間が近づくにつれ落ち着きがなくなり幾度も座布団の上で座りなおしたりしていた。
そうして約束の時間になった。
3分ほど遅れて、俺を呼ぶかすかな声が障子越しから聞こえてくる。
木がスライドする音とともに振り返ると、近藤さんが部屋に入ってくるところだった。
お待たせ、と言われたので、すげー待ったとふざけて言い返してやると、近藤さんは笑って、俺の頭をくしゃくしゃかき回す。
痛ェよ、なんてさほど痛くもないのに悪態をついたくちびるを塞がれ、布団の上にもつれるようにして倒れこんだ。
舌を絡ませながらキスをして、服を脱がせあう。その手際のよさは初めて身体を重ねたときとはだいぶちがい、スムーズに事は進んでいく。
身に着けていたものをすべて取り払ってしまったあと、近藤さんがやけに真面目な顔をして、ひとつの提案を持ちかけてきた。
なんだ急にと最初は面食らったが、断る理由はないし、また俺も興味があったので、俺はしぶしぶ了解したふうに(あくまで“見せかけ”にすぎない)うなずいてみせた。
すると近藤さんは満面の笑みで、それはもう嬉しそうに、先刻とってしまった着物の帯を握りしめ、それで俺の両目を覆うようにして後頭部できゅっと結んでしまった。
これで俺の視界は真っ暗闇だ。何も見えない。
俺の息があがっているのは、先刻の接吻けのせいなのか、それともこの異常な状況下にいるせいなのだろうか。
視界が見えない分、聴覚がひどく敏感になっている。そして、例に漏れず冷たい空気に晒された皮膚も同じく。
頬に何かが触れた。思った瞬間に俺は身を引いていた。それが近藤さんの指であるのは理解していたはずなのに、身体が勝手に動いていたのだ。
案の定、近藤さんのちょっと低い笑い声が聞こえてくる。恥ずかしくなって顔をうつむかせたが、それがなんの意味もないことだっていうのも、わかっていた。
たちまち俺の身体はキスの嵐に見舞われた。常よりも敏感に反応してしまう俺を面白がってか、近藤さんの愛撫はいつもより執拗に感じられた。
もうやめてくれと哀願すれば、近藤さんはよしよしとなだめるみたいに俺の頭を撫でるのだった。
近藤さんは大概俺のことを子ども扱いしすぎだと思う。そのことに俺が逐一腹をたてているのだって、近藤さんはとうにお見通しなのだ。
これは今度、はっきり言ってやらなければならない。いまは、ダメだ。だって、それどころではないのだから。
すっかりくしゃくしゃになった敷布の上で四つん這いになると、近藤さんが俺のなかにゆっくりとはいってきた。
じりじりと焼けつくように熱い。その苦しさに思わず喘いだ。
すべてを埋めこんでから、近藤さんが大きく息を吐き出した。
動いていいかと尋ねられ、俺は声を発するかわりに頭を縦に振った。近藤さんが動き出すと、俺の四肢は震えが止まらなくなる。
特に両腕に力が入らない。視力を奪われているので、いつもより体力を消耗してしまったのかもしれない。
俺はとうとう両腕を折り、頭と肩を敷布に押しつけるかたちで倒れこんでしまった。すると近藤さんの動きがはやくなる。
いっそうせわしなくなる息遣いで、聴覚がいっぱいになる。あ、あ、あ。俺はもう耐えられなかった。
ひときわ大きく身体を震わせて達すると、つづいて俺の腹のなかもぶわりと熱くなった。
息も絶え絶えになりながらうつぶせに倒れていると、近藤さんが俺の目隠しをはずして、どうだった? と訊いてくる。
俺はちかちかする瞼をこすりながら、なんにも言えずにいた。
すると近藤さんは俺の気持ちを読み取ったのか、でもいつもよりきもちよさそうだったじゃん、と口許をゆるませた。
俺は顔をすっかり火照らせ、バカじゃねェのとだけ悪態をついて、近藤さんの胸板に鼻先をぶつけた。
「でも俺はやっぱり、アンタの顔が見れるほうがイイな」
という脳内シミュレーションをしていると時間がたつのも忘れてしまう。
時計を見やってそろそろ1時になることを確認すると、俺は冷えきった布団のなかにもぐりこんだ。