消えた致死量0.3グラム
「なァ近藤さん、今日市街に出たらめずらしいモンを見つけてよ、なんだと思う? 薬、なんだけどさ。
ただちょっとな、呑まされたヤツに惚れちまうッていう、まァつまりは惚れ薬なんだけど。あ、別にからだに害はないらしいぜ。……な、アンタは、効くと思う?」
「んーどうかなァ」
「おい! ちゃんと聞いてンのかよ!」
曖昧な近藤の答えに焦れた土方は、ばしぃん、と卓袱台を叩きつけ、飯をかっ込む近藤を睨みつけた。
すると近藤は驚いたように目を見開いて、それから米粒のついた口端をあげて笑った。
「ちゃんと聞いてるって」
「だったら」
「でも俺には効かねェよ」
う、と土方は言葉を詰まらせた。浮かせていた腰を、おずおずと引く。
つまり土方は、かの薬を胡散臭そうに鼻で笑いながら――ではなく、意気揚々と購入し、近藤の食事にこっそり混入したのだった。
でもまさかバレていただなんて!
「……ひとが悪ィの」
土方が恨めしげにくちびるを噛むと、近藤は「バカだなァ」と困ったふうに苦笑した。
「そういうのは、おまえに惚れてないヤツに試さないとわかんねえだろ」
ああ、もう手遅れでした。
20061202