狼を食う羊
今日も無事何事もなく一日が終了。
夕飯食べて風呂にも入って、ちょっぴり酒を飲んでほろ酔い気分のまま今日はもう寝てしまおうか。
押入れから布団を引き出したとき、障子の向こうから声がした。
「こんどーさん」
「お、どうした、トシ」
覗いた顔に笑いかける。
一緒に寝るかァ、なんて冗談半分で言えば「いいのか」なんて真顔で問われて、まさか今さら「冗談だッて」なんて笑い飛ばすこともできなくて、
「あ、うん」
頷きながら、さァどうぞ、部屋へと招き入れる。
「ちょっと待ってな、いま布団敷くから」
「俺がやってやろうか」
「いいって、こんぐらい」
抱えたままの布団を畳の上にばさりと下ろし、皺くちゃのシーツを伸ばせば寝床は完成。
「じゃあトシ……」
寝ようかと振り向くと、俯き加減の瞳がジッとこちらを見つめてきていて、その熱視線加減に思わず一歩後退してしまう。
「なァ近藤さん」
「うん……?」
「耳かきしてやろうか」
「……はい?」
なるほどそのためにやって来たのかと妙に納得がいった。好奇心いっぱいの目は爛々と輝き、否とは断れない雰囲気だ。
「や、やさしくしてね」
「あたりまえじゃねーか」
いま敷いたばかりの布団に正座になって、「さァ来い!」と言わんばかりにふとももをぱしりと叩く姿はいっそ異様な光景で、普段の――真選組副長に身を置く彼とはあまりにもかけ離れすぎている。(だってこれから耳かきタイムなんだよ!)
「張り切ってるね、トシくん……」
「ん。やさしく、してやるからな、近藤さん」
おそるおそる膝枕を享受して、片耳を貸したところで怖ろしいひとりごとが降ってきて、身の危険を感じずには、いられなかった。
「耳かきしてるときって、すげー無防備になるよなァ」
(おねがいだから、笑いながら言わないで!)
食われるより先に、食え
20061015