朝からどことなく近藤の様子がおかしい。 そのことにいち早く気づいた土方は、そそくさと近藤のもとへ向かい、気遣うよう尋ねた。
「なんかあった? 近藤さん」
 俺にできることがあったらなんでも言えよ。何気なく近藤の二の腕に触れ、そっと微笑みかける。
 一見したところ裏表のないその笑顔の裏にはしかし、たっぷりと下心が含まれているのは禁じえない。
「トシ……」
 だが、ひとを疑うことを知らない近藤は(それは彼の長所であり、またくしくも短所となりえた)、土方のそれをまったくの善意と受け取ってがしり、土方の両手を握りしめた。
「俺な」
「ん、どう、した」
 近藤は意図せず他人との距離を詰める傾向にあるようだ。
 土方は、近すぎるほど眼前に寄せられた近藤の顔に視線を泳がせながら、ちいさく喉を鳴らした。 おのれの積極性とは別に、近藤から近寄られてくるのは慣れていないので。
「俺の今日の運勢、最悪なんだッてよ」
「……は、あ?」
「乙女座、12位なんだって! どうしよう俺、今日、有給取ってもいいかな!?」
「……いいんじゃねーの」
 思わずがくりとこうべを垂れて、そういや以前も星座占いで何やかやと騒いでいたこともあったなと苦い記憶がよみがえる。
 今日は一歩も部屋から出ねェ! そう意気込む近藤に、じゃあ俺がずっと傍にいてやるからという言葉を土方は言いそびれた。
 むろんわざわざ言わなくても、その気はたっぷりあったのだけれど。


逃げ惑え、乙女座に閑暇はない


20061014