一枚の紙を握りしめて屋上に駆け上がる。無人のそこは冷たい風にさらされて、ほんの少し寒かったが気にせずコンクリートの上に寝転がった。
仰向けになって薄っぺらい紙を青い空に掲げてみると、ちらつくのは進路希望調査の文字。
あーめんどくせェ。このまま手を離せば簡単に風に乗って飛ばされるだろうからそのまま悩みと一緒にどこかに消えていっちまえ。
なんてよこしまな考えに耽っていると突然屋上の扉が開いて聞き慣れた声が俺の名を呼んだ。
「トシ、ここにいたのか」
一瞬跳ね上がった心臓を抑えつつぐぐいと顔だけを動かしてそちらを見やれば、笑顔を浮かべた近藤さんが歩いてくるところだった。
俺の隣にやって来ておもむろに座り込み(ちょっと近すぎじゃねえかな!)、身体を倒して俺が持ってる用紙を覗き込む(だから顔、近いって!)。
「トシくん決めた?」
「決めてねー」
だから悩んでるンだろ、言って空欄を睨みつければ手のなかのそれが奪われる。
上半身を起こした近藤さんはジッとプリント用紙を見つめた後、ふいに俺のほうを見下ろして、
「だったら俺ンとこ来る?」
「……」
「いつでもいいぞ」
やけに真面目ぶった顔をして言うからそれが冗談なのか本気なのか俺にはわからなくて、でも答えなんてもうとっくに。
本気にするからやめてよダーリン
「いますぐ行ってもイイ?」
20061008