朝起きると死んでいた君へ
俺は死んだんだよと彼は言った。俺が目を覚ましてぼんやりと天井を見つめているときだった。
開口一番彼は言った。目をあわすよりも先に淡々とした口調でつぶやく、それはなんだか投げやりなふうにも聞こえた。
俺の横脇で、うつ伏せの状態で頬杖をついていた彼は、遠くのどこかを見ていた瞳をふいに俺のほうへと向けた。
漆黒の眼のなかに俺の姿が映っている。情けない、憮然とした顔をしていた。
俺は寝ぼけているんじゃないだろうか。もしくはまだ夢の世界にいるのだろうか。
今さらながらに思って、寝起きだからか妙に重たく感じる腕を持ち上げ、瞼をこする。こすって、瞼を開けた。目の前には不思議そうな表情をした彼がいた。
あいかわらず頬杖をついている。さっきとなんら変わらぬ光景。どうやら夢ではないらしい。
「でもおまえ、生きてンじゃん」
おもむろに手を伸ばし、彼の頬に手のひらをくっつけた。指先がひんやりと冷たい。でもそれは、起きたばかりだからに決まっている。
「さわれるし」
白い肌の上で指をすべらせ、たどり着いた赤い唇をそっとなぞる。それがちいさく震えたのは、気のせいだろうか。
目を伏せた彼は、微かに睫毛を震わせながら薄く唇を開いた。
「アンタだけ」
特別だからな、と誇らしげに彼は微笑んだ。喜んでいいのか悲しんでいいのか、正直わからない。
言えば彼は、「喜べよ」と肩を揺らして笑った。そうして「アンタらしいけど」、静かに続けた。
俺をじっと見つめたまま、笑っていたはずの彼の顔は次第にぐにゃりと歪んでいった。
「近藤さん……」
彼が俺の胸元に縋り寄ってくる。それでもなぜだろう、その感覚の一切を感じないのは。
先ほど彼の頬に触れた手はもう動かなくなっていた。ああなんでそんな泣きそうな顔をしているんだ。声も出ない。
「なァ近藤さん、俺、アンタがいなくちゃ……」
声が遠くなる。俺を呼ぶ声。こたえようとしてもう何も、聞こえなくなった。
そんなかおしないで死にきれないから、
20060927