世界が終わる日
「わかった近藤さん、俺を抱いてくれ」
しみじみとうなずきながら土方がつぶやきを落とすと、近藤はまるで聞き慣れない言語を聞いたかのように「はっ?」と目を見開いた。
近藤が驚くのも無理はない。
無論土方は日本語でしゃべっていたので近藤にはその「言葉」は伝わってはいただろうが、その「意味」までを理解するのに時間を要するだろう。
それくらい、突拍子がなくあまりにも唐突なことだったので。
近藤が固まってからたっぷり一分経った後、土方は再度先刻とまったく同じ言葉をまったく同じ調子で吐き出した。
するとようやく我に返ったふうに近藤はぱちりと瞬きを一度する。
「……おいトシ、一体どこからそんな話が」
「男を抱くのが厭なのかそれとも俺が嫌いなのかだったらどこが悪い? 俺アンタのためだったら直すよもう時間はないけどできる限り、そうしたら俺を」
矢継ぎ早に紡がれた言葉はひどくなめらかに舌の上を滑り出たが、それを容易に塞き止めたのは近藤の厚い胸板だった。
(……ちがうのに)
そうじゃない抱いてって言ったのはこんなふうじゃなくてもっと――。
(アンタが振り向かないのならこんな世界さっさと滅んじまえばいいのに)
土方は近藤の背中に腕を回した。こんなにも身体と身体は密着しているというのに、心はどこかに置き去りにされたみたいだった。
暗闇に取り残される。