首周りに圧迫感を受けて俺は目を覚ました。
はたと気づくと首だけでなく腹にも何か重さを感じる。
息苦しさに目を開けると、薄暗い中腹の上にまたがっている人影が見えた。
一瞬どきりとしたものの、そんなことするような人間、俺は他に心当たりがなかった。
「近藤さん、起きたか」
嬉しそうに笑みを零すのは俺の大事な右腕。
「……トシ」
そんな所で何やってるンだ。訊くとトシは顔を綻ばせるだけで何も答えない。
上半身を起こそうとしたが、後ろにぐいと引っ張られる感覚に布団に舞い戻ってしまった。
その不自由さを不審に思い、首を回して背後を見やれば思いもかけなかった光景を目の当たりにする。
「なんだコレ」
真っ先に見えたのは柱に結ばれた、鎖だった。俺が動くたびにじゃらじゃらと金属音を立てる。
伸びているそれを目で追っていくと、辿り着いた先は俺の首――。
「え、何コレ」
そこでようやく自分の身に何が起こっているのか判明した。俺の首に何かがはまっているのだ。
ぶら下がった鎖が重たく感じる。喉仏の辺りに触れてみると、硬い感触が指先に当たった。
「特注なんだぜ、ソレ。ちゃんとアンタの名前入りだ」
俺の困惑をよそに、こつりとトシの指が俺の首にはまっている忌々しい輪を弾いた。
顎を引いても俺の視界には入ってはこないから、なんとも言えない。というかはっきり言ってこれっぽっちも嬉しくないぞ。
そんな笑顔を見せられたとしても。
「はいはいお遊びはここまで。早く取ってコレ」
ぽんぽんと馬乗りになったままのトシの腰を叩くと、それまで愉悦を含ませていた目の色が途端曇る。
「無理だぜ、ソレ鍵付いてるからな」
「……えええ!?」
ちょっと待って今すごーく聞き捨てならないことを聞いた気がするんですケド。
不機嫌そうに目を細めたトシは、唇だけを緩ませて囁いた。
「鍵、欲しいのか?」
「当たり前だろう。おまえはずっと俺をこのままにしておく気か?」
「ああ」
「ト……ッ!」
「冗談だよ、近藤さん」
いや今の目は冗談を言っている目には到底見えなかったぞ!
思わずアハハと乾いた笑いを漏らしてみると、トシは億劫そうに肩をすくめて、
「鍵ならアンタのすぐ近くにある」
「マジでか!」
朗報を聞いて俺はすぐさま飛び起きた。……そう、すっかり首輪の存在も忘れて。
「うぐおォォォッ!」
「……ほんとばか」
思い切り首を締めつけられて悶絶を打つ。今のはやばかった苦しかった死ぬかと思った!
「なァ俺の喉仏潰れてない!?」
「へーきへーき」
ちょっと適当すぎやしねーかその応え……。
「……で、どこにあるンだ?」
咳が止むのを待ってから尋ねると、トシは両の口端を吊り上げた。
「俺の中」
「……は?」
「アンタがいつも入ってくるトコにあンだよ」
取りたかったら自分で取れよ。笑うトシに俺は眩暈を感じずにはいられなかった。
繋囚ごっこ。
「俺はアンタに縛り付けてもらえるンだったら大歓迎だ」
呟いたトシはこちらをチラと見たが俺は聞こえなかったふりをした。
20060612