あめ、どしゃぶり
雨はやむどころか激しさを増す一方である。
近藤と落ちあった土方は、近藤に連れられるがままに居酒屋へとやってきた。
「迎えにきてくれたお礼に、俺がおごってやろう」
いわれなくても、自分から誘おうかと迷っていたので異存はなかった。ただし、赤ら顔の近藤にひとこといい添えることも忘れない。
「アンタはもうじゅうぶん飲んだろ。あと一杯だけにしとけよ」
「えええ」
近藤は不満そうにくちびるをとがらせたものの、二杯目からはノンアルコールにかえていた。そのことをなんだかくすぐったく思いつつ、土方も近藤とおなじものを頼んだ。
「にしても近藤さん、アンタ、嫁さんもらってからもこうやって迎えにきてもらうつもりかよ。夜中とか、危ないだろ。俺だったらいいけど、そういうの、ちゃんと考えて飲まないと」
「だいじょうぶだって」
説教じみた口調に、近藤が軽口でかえしてくる。嫁なんてもらわないよ、と言ってほしかったわけではないが、それをスルーされるのも嫌だった。自分で自分を貶めて、ばかみたいに落ちこんだ。黙りこんだ土方に、近藤がだって、と口を開く。
「俺が呼んだら、トシがきてくれるだろう」
ぴくりと口もとを引きつらせ、土方はかぶりをふった。
「……俺は行かないよ」
「きてくれるよ」
「行かないって」
「きてくれる」
「ああ、行くよ」
土方はみょうにいらいらとした感情を押し殺すことができず、ついに吐きだした。
「そうだな。俺は、アンタが必要としてくれるならどこへだって行くさ」
近藤のうれしそうな顔が視界のすみでちらついた。目をつむっても、それは焼きついて離れない。
「……俺はずっとアンタのそばにいるよ」
ずっとそばにいていいかと訊いてみたかったが、たいして飲んでいない酒のせいなのか、喉がひりついて声をだすことができなかった。
20090715