そして、暗転
廊下を歩いていた土方は、行く先の縁側で寝転がっている男の姿を見つけて足を止めた。近藤が、庭先に大きなからだをむけて眠っているのだ。ひなたぼっこをしているうちに寝てしまったのだろうか。土方はちいさく笑い、ふたたび歩きだした。すると、その気配を感じ取ったのか、近藤が目を覚ましてしまった。
「残念。寝こみを襲おうと思ってたのに」
つぶやきは、寝起きの近藤の耳には届かない。おはよう近藤さん、と今度ははっきりと声にだして言えば、ああおはよう、と近藤はのっそりとからだを起こす。おはよう、といえる時間帯ではない。もう日は傾いている。
土方は近藤のとなりに腰をおろし、まだ眠たそうな顔をながめた。
「夕飯まで寝てたら」
「いや、これ以上寝たら夜眠れなくなっちまう」
すでにたっぷり睡眠をとったあとの顔で言う。
「なんだ、俺のために昼寝してんのかと思った」
「え?」
「夜に備えて」
近藤の反応は鈍かった。さぞ狼狽えてくれるかと思いきや、予想に反して表情はかわらない。まっすぐなまなざしをむけられ、むしろ土方のほうがどぎまぎしてしまった。
「おまえこそ昼寝しないでいいのか」
「は」
「夜に備えて」
だろ? とニヤリと笑う近藤に、土方はなにも答えられずにくちびるをかみしめる。夜はもうすぐそこまでやってきていた。
20090515