「なァ、トシ。なにかほしいものあるか?」
土方の誕生日が一週間後に迫ったあたりから、近藤が頻繁に問いかけてくるようになった。訊かれるたびに土方は「べつにない」と言っていたのだが、それだと近藤の気が収まらないらしい。
「おまえがほしいもの、なんでもいいんだぞ。遠慮するな。普段おまえに迷惑かけてるし、そんな大層高いモンじゃなければなんでも買ってやるぞ」
「なに言ってんだ。キャバクラで盛大に金使ってるくせに。キャバクラ通いをやめたら頼むよ」
「うっ、それは……」
太っ腹なところをみせる近藤を土方は冷たく一刀両断してみたものの、言葉を詰まらせる近藤を見て、すこしばかり胸が痛んだ。
キャバクラ通いをやめてほしいのは土方の本心であった。無駄遣いをやめてほしいという思いと、女のもとへ行くなという苛立ちがないまぜになっている。
そもそも土方がほしいものは金でどうにかなるものではないのだ。
近藤にはわからない。
しょんぼりと肩を落とす近藤をまえに、土方はちいさくため息をこぼした。まったくひとの気も知らないで。
「アンタがほしい」
ぼそりと呟くが、近藤は意味が通じていないのか「え、俺?」と自分を指差しきょとんとしている。
「そう、アンタ。近藤さん。俺ずっとアンタがほしかったの。なァ近藤さん、抱いてくれよ。俺とセックスしてくれよ。俺をめちゃくちゃにして。俺、アンタの精子がほしいんだ」
矢継ぎ早に言えば、近藤は困惑したふうに眉尻を下げた。
「トシ……?」
土方は、アンタがなんでもいいって言ったじゃねえか、と苛立って近藤を押し倒す。瞠目する近藤のうえに馬乗りになって、土方は近藤の厚い胸板に額を押しつけた。
「近藤さん。俺はずっとアンタのことが――」
そこで目が覚めた。
土方は荒い息を吐き出し、額の汗をぬぐった。
ひどい悪夢である。誕生日になんて夢を見てるんだ。布団から起き出しても、早鐘を打つ心臓はなかなか収まらなかった。
よろよろと覚束ない足元で部屋を出ると、近藤と会った。
いま一番顔を見たくない人である。土方の胸は罪悪感でいっぱいになった。そんな土方の胸中を近藤は知るよしもない。
「おはよう、トシ。誕生日おめでとう」
破顔する近藤を直視できない。俯き加減でありがとうと口のなかで呟く土方を、近藤は微塵も不審に思うことはないだろう。
「なァ、トシ。なにかほしいものある?」
幾度目かの問いかけに、土方はついに白旗をあげた。今朝の夢が正夢になったら困る。
「いまはなんもねェから、代わりに昼飯でもおごってくれよ」
土方の精一杯の譲歩に、近藤がうれしそうに笑った。
「おう任せろ! いいモン食わせてやるからなァ」
「……期待してる」
近藤の笑顔に土方は眩しそうに目を眇めた。
俺はアンタの笑顔をとなりで見ていられるだけで、それだけでいいんだよ。