真相は闇のなか
風呂からあがった土方は、こたつに伏せている大きな背中を見つけて顔をしかめた。先ほど立ち去る際、寝るならちゃんと部屋にもどれよと言っておいたのに、その忠告はあっさりと無視されたようだった。年が明けた、めでたいぞ、と言って酒を浴びるように飲んでいる近藤を見てから、酔いつぶれるのは目に見えていたのでこの状況を見ても驚きはしないが、少々呆れの気持ちもある。
ほんとうならゆっくり寝かしておいてやりたいと思うものの、ここで放っておいて風邪をひかれてもこまるので、土方は近藤を起こすことにした。
「近藤さん、ここで寝るなって。自分の部屋で寝ろよ」
両腕のすきまからのぞいた赤ら顔が、うーん、と意識のはっきりしていない声で返事をする。
「近藤さん」
「んんー……、でも俺、まだ風呂入ってない……」
「そんな状態で入っても、ぶっ倒れるだけだろ」
「じゃあトシもいっしょに入ろ」
酔っ払いのたわごとに苦笑をこぼした土方の表情が固まる。
あわてて頭をフル回転させて、文章を組み立てようとするが、うまくいかない。
「お、俺はいま、入ってきた」
「なんでェ」
「なんでって、さっき言っただろ」
「知らん」
知らんじゃねえよさっき言ったのちゃんと聞いておけよ!
と叫びたいのを酔っ払いのたわごと酔っ払いのたわごと、とくりかえし自分に言い聞かせ、こらえる。
しかめ面をした土方のまえで、近藤がもそりと上半身を起こした。背伸びをしながら、大きなあくびをもらす。
「おやすみ」
「ん」
ゆらゆらと大きなからだを揺らしながら、近藤が部屋から出て行く。
ひとりきりになった部屋で、土方は立ち尽くしたまま動けないでいた。
近藤が通りすぎる際、残していった言葉。「なんだ、ざんねん」というつぶやきが聞こえたのははたして幻聴だったのかいなか、はっきりしない。
20090102