幸せ家族計画♂
妊娠が判明してからというもの、土方は近藤から異常なほど過保護に扱われるようになった。
見廻り勤務を減らされたおかげで仕事は主に書類整理、やれ走るなだとか、やれ重いものを持つなだとか、心配なのはわかるがちょっと大袈裟すぎるのではないかと反論したくなるほど行動を制約されていた。それだけでもフラストレーションは溜まる一方であるのに、その制限は夜の生活までにも及んでいるのだからいいかげん土方の我慢の限界を超えるのも仕方のないことだった。
「じゃあトシ、見廻りに行ってくるから」
書類の山に囲まれている土方のもとに近藤がやってきた。以前よりもマメに顔を見せてくれるようになったのはうれしいが、土方はそれを心からよろこぶことはできなかった。
俺も連れていってくれ、という思いをこめた眼差しを向ける土方に、しかし近藤は気づいていないのか、それともさらりと黙殺したのか、
「なんかほしいものとかあったら言ってくれよ。買ってくるから」
でも煙草はダメだからな、と苦笑する近藤を、土方は持っていた書類を置いて見据えた。
「近藤さん」
「うん?」
「だから、アンタがほしい」
近藤は、部屋の入り口に立ち尽くしたまま土方を見つめていたが、やがてのっそりとなかに入ってきた。そうして土方のかたわらに片膝をつくと、土方の背後に腕をまわし、やさしく抱きしめた。まさか、これから? と思いながらも土方も近藤の背中に腕をまわそうとしたところで、よしよし、という言葉とともに背中をぽんぽんとたたかれ、はっと我にかえった。
「……近藤さん」
「で、ほしいもんはなんもないか?」
「近藤さん!」
いまの抱擁はただ自分をなだめるためのものだったのか。土方が抗議の声をあげると近藤はゆっくりと離れていった。
「それは帰ってきてからな」
「……ほんとうかよ」
半信半疑のまなざしをむける。どうせまたごまかされるに決まっている。ふてくされる土方のくちびるに近藤のくちびるが重なった。
「じゃあ行ってくるな」
「……いってらっしゃい」
俺はなによりアンタを我慢するのがつらいんだよ。言葉を呑みこんで土方は、ため息をつきながら机のうえにばたりと倒れこんだ。
20080726