その日の夜、近藤が土方の部屋にやってきて、めずらしく近藤のほうから抱きしめてきた。土方は、ほんのりとしあわせな気分を味わいながら、ふと昼間のことを思いだした。
このまま流されてしまうのは、なんとなく悔しい。
長い接吻けが終わると、土方は胸もとに伸びてきたごつい指を捕らえて、近藤の胸板へと押し返した。
「俺、いまそんな気分じゃねえの」
顔をそむけ、そっけなく言い放つ。
だが、本心ではない。
ちょっとくらい強引にきてくれたら、許してやろう。
土方のそんな目論見は、しかし無残にも打ち破られた。
「……わかった」
しょんぼりと肩を落として、近藤が離れていってしまったのだ。土方の口から、え、と間の抜けた声がこぼれ落ちた。うそだ、と言うのもなんだか間抜けすぎて言いだせない。ついには近藤が、「おやすみ」と言って部屋をでていってしまった。おやすみ、と言い返すひまもなかった。
ひとり部屋に取り残された土方は煙草をくわえ、つぎはいつになるんだろうかと、味気ない煙とともに重たいため息を吐きだした。