コンビニ(店員×客)その1
帰り道、いつものコンビニに寄るとレジに見慣れない男がいるのに気づく。さては新人かとその顔をちらりと見やれば不覚にも視線をそらせなくなってしまう。ちょ、待て俺、なんだこの胸のときめきは! おいおいゴリラ相手に冗談じゃねえ。いや落ち着け俺、ゴリラじゃなくて人間、それも男だ。男! そうその新人は大男で浅黒い肌の筋肉質という見るからに男であってどう見ても女じゃねえだろっていうのに俺はどうやらひと目惚れしてしまったらしい。
まあしかたない。
さて弁当でも買って帰るかと財布をのぞきこんで100円玉を7枚確認、あの男のレジのまえにだれもいないのを見て足早にそこへむかう。「いらっしゃいませ」とにこやかに笑うその顔にふたたび視線が釘づけ、ぎくしゃくとうなずいて品物をカウンターに並べる。
「685円です」
言われるままに小銭をだして、そこで気づいた。35円足りねえ……! 俺としたことが100円玉と50円玉を見間違えてしまったらしい。所持金650円。さらに悪いことは重なって、後ろを振り向けばレジ待ちの客がいつのまにかずらっと並んでいる。おそるおそる顔をあげてレジの男を見やるときょとんとした目と視線があって、俺はひきつった顔をさらしながらちいさな声でささやいた。
「や、やっぱりこれやめときます」
会計をすませ、予定よりも軽くなったコンビニ袋をがしゃがしゃと揺らしながら出口へ急ぐ。
これからコンビニに来るのが楽しくなると思っていたらさっそく明日から気まずいじゃねえか。なんで100円と50円似てるんだよ畜生! なんて逆ギレしながらも口もとがゆるんでしまうのをとめられないまま帰途につく。
20080619