現代パロ/アパート住まいの近藤さん/トシくんと猫の争いは終焉に……?


それは真夜中、激情サバイバル/後編


「なァ、俺も三日間ここにいていい?」
 土方は濡れた髪の毛をタオルで拭きながら、さり気なく近藤を上目遣いで見やった。本当は今日だけ泊まっていく予定だったのだが、近藤の膝のうえに我が物顔で居座る奴がいるので、これ以上は好き勝手させてやりたくはなかった。
「そのまま居ついてもいいぞ」
 近藤の言葉に土方は一瞬からだを硬直させた。居ついてもいい? 近藤はコタツに頬杖をついたままうんうんとうなずいている。
「こ、近藤さん、それってもしかしてプロポー、イテッ!」
 胸をときめかせて言いかけた土方の声は悲鳴にかわった。コタツのなかに突っこんでいる足に鋭い痛みが走ったのだ。布団をめくるとそこにはいつの間にか敵がひそんでいた。足の甲には見事な切り傷。犯人は言うまでもない。
「なんだテメェはッ! 俺と近藤さんの邪魔ばっかしやがって」
 するりと脇をすり抜けていく後ろ姿に罵声を浴びせると、なだめるように近藤が土方の頭をぽんぽんとたたく。
「だいじょうぶだよトシ、俺はおまえのモンだから」
 近藤さん、と赤らめた顔を土方はすぐに蒼白させた。先刻、自分が敵に放った台詞が思い出される。『おまえに近藤さんは渡さない』と、猫相手にむきになったあの台詞が。
「さ、さっきのやっぱり聞いてたんじゃねえか……!」
「ちがうって聞いてたんじゃない、聞こえてきたんだ」
「おなじだ!」
 近藤は平然としているが、それはなんの気休めにもならない。穴があったら入りたいというのはこういった気分だろうか。土方はタオルで顔を隠すようにしてうつむいた。
 救急箱を持ってきた近藤が土方の足の手当てをはじめる。ごめんなと近藤が謝るから、土方は「別にアンタが悪いわけじゃねーだろ」とそっけなくかえした。
 猫は近藤のいた場所でこちらに背を向けて丸くなっている。いまがチャンスとばかりに土方は近藤の腕をとってベッドにするりとあがった。ふたり分の体重を受け、わずかに軋んだベッドの音で振り向いた猫に笑みをつくってみせる。
「残念だったな、ここは俺の場所だ」
 猫がにゃあと鳴く。まるで悔しがっているみたいな鳴き声に土方はようやく胸がすっとした。
「近藤さん、三日間ここで過ごそうぜ」
「エッ」
 瞠目する近藤の首にしなやかな両腕をまわして土方は接吻けをねだった。

20080331