枕の下で攻防


 枕の下に写真を置いて眠ればそのひとの夢がみられるというから、それじゃアそれがほんとうなのかどうか試してみようかというのは実は建前でほんとうはどさくさにまぎれて近藤さんの写真を撮りたかっただけなのに、どうしていまこの状況になっているのかが俺には正直、わからない。
 写真よりも本人のほうがイイんじゃないか。そう言った近藤さんはなにを思ったかおもむろに俺の布団にもぐりこむと「じゃあ寝ようか」とあっさり一言。俺は絶句。どうした、寝ないのか。いや寝たいけど寝る場所が。なに言ってンだトシ、ここだろ、ここ。いやいやアンタが寝てるだろうが! 俺は必要以上に必死になっている俺に気がついてどうにか落ち着こうとしてみるがまさかこの状況下で落ち着けるわけがない。だがよくよく考えてみる。オイオイそれっていっしょに寝ようってことなのか? 俺の布団に仰向けになって大あくびしている近藤さんを思わず凝視。そんな俺に気がついた近藤さんが傍らをぽんぽんと手で叩くそこは確かに俺の入るスペースはあいている。せまいけれど。
「……わかった」
 俺は覚悟を決めて近藤さんの横におずおずとお邪魔する。お邪魔するといってももともとこの布団は俺のものなんだしなんの遠慮もしないでいいはずなのだがまさしく「お邪魔します」なそんな気分。だいたい近藤さんからしてみたらやましい気持ちなんて一切ないのだからこんなに緊張する必要はないのだ。でも俺はやましい気持ちでいっぱい。やましいやらしい俺でごめんな近藤さん。懺悔しながらもやましいやらしい気持ちでいっぱいのままごろんと寝転ぶと、後頭部に枕とはちがう感触があたった。うん? と思って起きあがってみると本来枕のある場所に近藤さんの腕が伸びていた。……邪魔なんだけど、それ。え、枕だろ。いや腕だろ、アンタの。うん、だから枕。近藤さんは枕と言い張るがそれは近藤さんの腕にほかならない。それを枕に俺が寝ろって?
「……いいの?」
 じゃねえだろ俺! 思わず訊いてしまう俺も俺だが臆面もなく「うん」とうなずく近藤さんも近藤さんだ。遠慮なく寝させてもらおう。

 次の日の朝、起き抜けに近藤さんが「どうだ、俺の夢みれたか」と訊いてくるから俺は「いいや、みれなかった」とろくに近藤さんのかおも見れずにこたえる。正直、夢をみるどころかほとんど眠れなかった。冷静に考えて眠れるわけがないのだ。だって俺はやましいやらしい気持ちでいっぱいだったのだから。きっと俺の目の下にはくまがくっきり浮きでているにちがいない。こんなかおとてもじゃないが見せられないから隠れてしまいたいと思いでもこの場所から離れるのもなんだかイヤで俺は頭から布団をかぶろうとしたけれど、近藤さんは「そうか、じゃあ今日も試してみようか」となんだか楽しげなかおをしてみせるので思わず釘づけになる。うわあ、俺は今日も眠れないにちがいない。そうして今日も夢をみれなかったら……と考えると不安になると同時になにかしらの期待もうまれてくる。期待って! そうやって俺は結局近藤さんを断ることはできないのだ。なぜなら近藤さんもやましいやらしい気持ちになってくれるのを首を長ーくして待っているのだから。
 近藤さんが布団からでようとしないから俺もぐずぐずと布団から抜けだせないまま、いつ起きればいいんだよと悩んでいる俺をよそに近藤さんはやっぱり楽しげなかおを浮かべているから俺はいつまでも近藤さんの気持ちがかわるのを待ちつづけなければならないのだ。


20080103