うそつき狼


 まったく女を知らないというわけではないだろう。 モテない振られたと日々嘆いているわりに、やけに慣れた仕草で素肌に触れてくるのはきっとそうであるからに違いない。
 幾度目かの射精を終えた土方は大きく息を吐いた後、そっと唇を噛み締めた。 弛緩した身体を支えるように、厚い手のひらが土方の腰に添えられる。発熱したその手は懲りもせず、腰を伝い白い双丘へと下っていった。
 くすぐったさか、それともくすぶり続けている熱のせいか、ぶるりと身体を震わせた土方は反射的に腰を上げた。
「ん、や、」
 たらりと太腿を伝い落ちていく白濁の感触すら、敏感に反応してしまう。
 筋張った指が汗で張りついた額の前髪をさらりとかき上げた。土方はその指を払いのけ、近藤の頭を胸に抱いた。
 汗ばんだ感触は決して心地の好いものではなかったけれど、土方は少しも気にならなかった。
「近藤さん、」
「うん……?」
「近藤、さん……」
 常とは違う声色に気づいたのか、ゆっくりと顔を上げる近藤に土方は目を細めた。
「……アンタやけに慣れてるよな」
 思ったよりもスムーズに言葉を発することができて自身で驚く。 薄く弧を描いた赤い唇はしかし微かに震えていた。土方は気づいてはいなかったけれど。
 近藤はきょとんとした顔をして、それからニヤリと口許を歪めた。
「そりゃトシのために勉強してるからな」
 よどみない声に土方は心臓が震えるのを感じた。
「勉強、ね」
 なるほど、と小さく頷いた土方に、胸に顔をうずめる近藤の表情を窺う術はなかった。

騙されてやってもいいさ。その代わりこれからもずっと騙し続けてよ。騙されるフリくらいはしてあげるから。……ねぇだから、ね、

20060502