
急激に浮上する感覚に近藤は身を強張らせ、目を見開いた。途端視界に入るのは、不安の色を表情に湛えた土方だった。
「だいじょうぶ、近藤さん」
「……ああ」
うなされてたんだよと告げられ、近藤は曖昧に頷き返した。見慣れた天井、襖、薄汚れた壁へと視線をめぐらせ、自分がいま確かに自身の布団のなかにいるのだと確認する。
続いて重たい腕を持ち上げ、額の上に手の甲を載せた。
汗をびっしょりかいていて、濡れた心地がいささか不快だったが、心臓の高鳴りを落ち着かせようとそのままの状態で大きく息を吐き出した。
傍らに膝を折って座る土方が、いまだ心配そうに見下ろしてくる。近藤が土方へと眼差しを向けると、勝手に部屋に入ってごめん、と繕うように言われた。
近藤は別にいい、とかぶりを振る。それよりも尋ねたいことがあった。
「なあトシ。俺、なんか寝言言ってた?」
「……なにも。よく聞こえなかった」
問いかけた後の微妙な空白を敏感に読み取って、思わず苦笑が漏れた。自覚はあった。
わざわざ尋ねなくてもわかっている。ただ反応が見たくてわざと問いかけたのだと知ったら、土方はどんな顔をするだろうか。
俯いてしまった土方を横目で見やって、近藤は薄く笑う。
「トシ」
「う、ん」
弾かれたように顔を上げる土方の頬に手を伸ばし、指先でやさしく肌を撫でた。その仕草に土方がそうっと目を細める。まるで猫みたいだ。
「一緒に、眠ろうか」
土方の目がますます細められる。近藤は頬を撫でていた手を徐々に下ろし、土方のくちびるに触れた。
「キスをしようか」
柔らかい両唇がわずかに震え、合間にちいさな吐息が漏れ、近藤の手のひらをくすぐった。
もうすぐ夏が終わる。茶番ももう、やめにしようか。
近藤がおもむろに起き上がると土方はわずかに怯えた目を近藤に向けた。近藤はそれにやさしく微笑んで「すきだよ」と囁いた。