虚勢


「ごめん、トシ!」
 ごめん、ごめんな。ごめんトシ。
 近藤さんの「ごめん」を聞くたびに、ココロが空っぽになっていくのを感じた。 どこかに置いてきぼりにされたみたいにぽっかり穴が開いて、ひゅうひゅうと隙間風が吹いているみたいに寒かった。
 一生懸命頭を下げる近藤さんを見ていると、鼻の奥がツンと痛くなったので、俺はそれを誤魔化すように咳をした。 近藤さんは相変わらず、バカのひとつ覚えみたいに「ごめん」だ。
 俺はそれ以上聞いていられなかった。耳を塞いでしまいたかった。
 だから、言ってしまったのだ。
「べつに俺はアンタじゃなくてもよかったんだ」
 だから気にすんな。そう言うと近藤さんは繰り返し呟いていた謝罪の言葉を止めて、そうか、と一言言ったきり黙りこんでしまった。
 そうして沈黙がふたりの間を包み込む。
 どれくらい経っただろうか、実際には数分も経ってはいないだろうけれど、俺には何十分にも感じられたあと、近藤さんが立ち上がる気配を感じた。
「そう、か」
 言い残し、近藤さんは部屋を出て行った。
 置いてきぼりになった俺は、くしゃくしゃになった布団の上でひとり、また零してしまいそうになる涙を必死に我慢した。


20070109/070401