感傷
酒の味しかしない接吻けだった。
それでも俺は夢中で近藤さんの唇に吸いついたし、近藤さんも俺の唇を貪るように接吻けてくれた。
まるで食われてしまうのではないかと思ってしまうほどの激しい接吻けに、俺の胸はどくりと高鳴った。
互いの口の周りが唾液まみれになった頃、ようやく近藤さんが唇を離した。
俺を見つめる瞳はまだ据わったままだったけれど、その奥に欲情めいた炎が揺らめいていることに俺は気づいていた。
きっと自分も同じに違いない。いや、もっともっと、色濃く映っているのかもしれなかった。
それを見せたくなくて、ぎゅっと目を瞑る。
そうすると余計に近藤さんの息遣いや手の動きを敏感に感じ取ってしまって、結局耐え切れなくなって目を開けてしまうのだけれど。
「あ、」
近藤さんが音を立てて首筋に吸いついてきた。痛いくらいの激しいものだから、もしかすると痕が残ってしまうかもしれない。
隊服でなんとか誤魔化せるだろうか。でももっと付けて欲しい。
――なんて意識を他にやってしまったところで、「トシ」と俺の名前を呼ぶ近藤さんの声が聞こえて、我に返る。
よかった。ここで他の女の名前を呼ばれでもしたら興醒めしてしまう。
たとえばあの……ああイヤだ、今は考えたくねえや。だって少しでも考えてしまうと、胸が締めつけられるみたいに苦しくなるんだ。
目の前には、やさしく俺に触れてくれる近藤さんがいるというのに。
近藤さんに眦を何度も何度も舐められて、俺は初めて自分が涙を流していることに気がついた。
痛い、と低く切羽詰ったような声で問われたけれど、ただただかぶりを振ることしかできなかった。
俺は確かにしあわせだったのだ。彼の腕に抱かれて、彼にやさしくキスをされて。
近藤さんが、好きだった。
20070109/070401