眼鏡もえにリベンジする
 土方は度の強い眼鏡をかけている。先日さっちゃんに借りた眼鏡は壊してしまったが、どうしても諦めきれずにもう一度借りたのだった。
 土方は近藤に揺さぶられていた。眼鏡姿を近藤に見せびらかすと、思ったとおり近藤がきらきらと瞳を輝かせるので、寝るのにはほんのすこしはやいけれど、そそくさと布団を敷いてふたりでもぐりこんだのだった。
「近藤さん近藤さ、ん」
 土方の鼻梁のうえで眼鏡ががくがくと揺れている。いつもよりもちょっぴり激しい気がするのは、やっぱり眼鏡効果なのだろうか。
 土方は視力が悪いほうではないから、眼鏡をかけると視界がぼんやりとしてしまっていた。目の前にいる近藤の顔もよく見えない。彼の息遣いが耳朶にふれたり、ぽたりと落ちた彼の汗が頬や鎖骨に伝っていくのはぞくぞくとしてイイのだけれど、近藤の顔が見えないというのが、すこし、不満だった。
 それに、なんだか気分が悪くなってきた。近藤から与えられる熱は気持ちいい。だけど、普段かけていない眼鏡のせいだろうか、それこそ近藤の顔をよく見ようと目をこらしていたので、余計に目が疲れてしまっていた。そのうえ近藤に揺さぶられているので、船酔いにあったみたいな感覚になってくる。ぐるぐると内臓がせりあがってくるみたいだ。
 うう、と土方は嬌声の合間にちいさく呻いた。
「つわりかも……」
 ぽつりとつぶやくと、近藤が「え?」と首をかしげていったん動きを止めた。土方はその隙を狙って、ちょっとずれていた眼鏡をはずし、ぽいっと布団の脇に放り投げた。あー、と名残惜しそうに眼鏡に視線をやる近藤の首にしなやかな両腕を巻きつかせ、ようやくクリアになった視界いっぱいに近藤を映りこませた。
「おれ、アンタの顔みながらイキたいな」
 土方は、今度の休みに近藤とふたりで眼鏡を買いに行こうとひっそり胸に決めたのだった。


07.09.10
*ぞっとするおはなし。