魔法のランプの行方
土方は魔法のランプを手に入れた!
これでどんな願いごとでも叶うはずだ。すべてが自分の思いどおりになるのだ!
胸をときめかせながら、さあどうしようかと土方は悩みに悩んだ。
一週間くらい休暇をとって、近藤とふたりきりでどこかに遊びに行くのもいい。
以前壊れてしまった虎鉄ちゃんを直して、近藤を喜ばせるのもいい(きっと喜んだ近藤に抱きつかれてしまうはずだ!)。
屯所を改築して、こっそり近藤とふたりきりの秘密の部屋を造るのもいい。
夢は広がるばかりだ。にやにやとくちびるをだらしなくゆるませている土方の許に、ほかならぬ近藤がやって来た。
「どうしたんだ、トシ。うれしそうな顔をして」
「アッ、近藤さん」
土方はあわてて魔法のランプを後方に隠した。
「なァ近藤さん、アンタなんかほしいモンとかあるか? 行きたいトコとか、なんでもイイんだけど」
口早に言えば、近藤はひょいと首をかしげて「うーん」とうなった。
「いまは別に……トシやみんなが元気でいてくれりゃそれだけでいいよ」
「……近藤さん!」
土方は非常に都合のいい耳をしていた。「自分がいてくれればいい」と捉えた耳を真っ赤にして、喜びに身を震わせた。その拍子に魔法のランプがするりと土方の手からすべり落ち、がしゃんと派手な音をたてて地面に叩きつけられた。
見事に壊れてしまったランプを、しかし土方はもうすっかり忘れていた。
「おれもアンタがいてくれるだけでイイ!」
思いきり抱きついたためによろけて尻餅をついてしまった近藤に、それでもなお土方はひっついて離れようとはしなかった。
07.06.07
*ぞっとするおはなし。