そのときハートは盗まれた
 最近土方はカードマジックにはまっている。
 こっそりと練習していたのは、すべて近藤に見せたいがためであった。ある程度上達した土方は、さっそく近藤の前で見事なカード捌きを披露してみせることにした。
 ひとつやるごとに近藤が大袈裟なほどに驚いてくれるので、土方はますます図に乗る。
「……あ、トランプ足りねェ」
「エッ、どっか行っちゃった?」
「ん、アンタが持ってる」
「持ってねェよ」」
「そこ」
 土方は身を乗り出し、正面にいる近藤の胸元を指先で叩いた。近藤が懐を開けてなかを覗く。着物のなかからばらばらとカードが落ちてきた。
「アレッ、いつの間に!?」
「な」
 土方は近藤の反応を見て満足げにうなずいた。
「トシくんすごいなァ!」
「すごいのはアンタ」
「へ?」
 畳に散らばったハートのカードをかき集めて、箱にきっちりとしまった。
「これ以上おれのハートを盗っていかないでくれよな」


07.06.02
*ぞっとするおはなし。