席替えをする/3Z
土方は朝っぱらから浮かない顔をしていた。なぜなら今日のホームルームで席替えが行なわれるからだ。
(くだらねェことを考えやがって)
土方はいまの座席が気に入っていた。
近藤の後ろの席。
黒板を見れば自然と大好きな近藤の姿が視界に入るのだ。こんな最高の席を他の人間に奪われるのは厭だった。
(……でも)
土方は、考えなおす。
隣の席ならば、いいかもしれない。授業中、ずっと彼をうっとりと眺められるのだ。いまの席の唯一の欠点といえば、彼が振り返らないかぎり顔を見ることが不可能なことだ。
隣の席になったら、と土方は考える。
彼とたくさんおしゃべりをして、あまつさえ教科書に隠れてキスだってできるかもしれない。授業中にもかかわらず、こっそりと!
ほんのすこし、もといだいぶ気分が浮上してきたところで、土方はしかし、ふたたび打ちのめされることになる。かの担任が、席替えのためにくじを作ってきたというのだ。
(よけいなことを!)
舌打ちしたくなった。どうせなら自由に生徒たちに席を決めさせればいいものを、と思う。
けれども席替えにおいて、くじ引きがもっとも公平な方法だろう。
黒板に書かれた座席に番号を振り分け、その番号と同じ数字が書かれたくじを順に引いていく。もし近藤と離れてしまったのなら、裏工作だって厭わないつもりだ。
だが、奇跡的なことに土方は、ふたたび近藤の後ろという魅力的な席を引き当てたのだ!
それは執念といっていいかもしれない。土方はすっかり上機嫌だ。ちょっぴり隣の席に憧れてみたりはしたものの、この位置が一番しっくりくる。
(おれたちはやっぱり運命の赤い糸で結ばれているのかもしれねェな)
土方は、今日もうっとりと近藤の背中を眺め続けている。
07.05.28
*ぞっとするおはなし。