しゃっくりが止まらない
 夕食後から土方のしゃっくりは続いていた。誰も彼もが土方の耳障りなしゃっくりを止めようと、流言に任せて彼を驚かせようとするので土方の虫の居所は徐々に悪くなる一方だった。
 大きくため息を吐き出したところで、そろりと背後に近づく気配を感じた。土方のよく知るものだ。
(まさかこのひとも)
 土方はこっそり苦笑した。
「わッ!」
 案の定、背後で土方をびっくりさせるような声があがった。
「……近藤さん、おれはそんくらいじゃア驚かな」
 振り向いたすぐ眼前に近藤の顔があった。くちびる同士が、かすかに触れ合う。
「驚いた?」
「……おど……ろいた」
 いたずらが成功した子どもみたいな顔をして笑う近藤を前に、土方のしゃっくりはすっかり止まっていた。


07.05.27
*ぞっとするおはなし。