目薬をさされる
「あ……近藤さん……こわい」
「平気だって、トシ。ほらちゃんと目ェ開けて」
「んん……」
「トシ……あんまりくっつくと、あの、トシくんそんなくっつかれちゃ」
「近藤さん近藤さ」
仲睦まじい声を、ぴしゃりと襖の開く音が切り裂いた。
「朝っぱらからへんな声がするのはここですかィ」
突然部屋に入ってきた沖田に土方はむっと口を尖らせた。だが、近藤に抱きついたまま離れようとはしない。眼差しはひどく剣呑なものにかわっていたけれど。
「てめぇ、勝手にひとの部屋に入ってくんじゃねえよ」
「あれ、いつからここは土方さんの部屋になったンですかィ」
「今日からだ」
きっぱりと言い切った土方の耳には、すぐそばであがった「エッ、そうだったの!?」という驚きの声は届かない。
うすく笑った沖田がまっすぐふたりのほうへ歩み寄ってくる。
「近藤さん、土方さんにはそれよりこっちをお勧めします」
沖田の懐から出てきたのはマヨネーズだった。
「さァ、思いっきりぶっかけてやってくだせェ」
「総悟てめぇッ!」
土方が怒鳴り散らすと沖田はそそくさと部屋から出て行ってしまった。
「まったくなにしに来たんだあの野郎」
ふんと鼻を鳴らした土方が近藤を見上げると、彼は受け取ったマヨネーズをじっと見つめていた。
「……近藤さん、まさか本気にしてねえよな」
「エッ、あ、うん」
繕うようにうなずく近藤に、土方は身を伸び上がらせてそっと耳打ちした。
「どうせアンタにぶっかけられんのなら、アンタの白いのがイイな」
07.05.22
*ぞっとするおはなし。