髪型について考える
 朝、洗面台で歯磨きをする土方の隣に、寝ぼけ眼をこすりながら近藤がやって来た。
「おはよう、近藤さん」
「おー」
 近藤は、コックをひねって思いきり水を出し、水飛沫が傍にいる土方にまで飛んでくるくらいぞんざいに顔を洗った。タオルで顔を拭いて、それから髪の毛のセットに入る。
 土方はその一連の動作をじっと見やっていた。口の端から歯磨き粉がこぼれていることにも気づかずに。
 くしゃりと寝癖のついていた髪の毛を固くワックスで立たせ終えた近藤が、そんな土方を見てくつりと笑う。
「トシくん、口」
「……アッ」
 半開きのくちびるを硬い指先で拭われ、土方は息を飲む。と同時に、口のなかに溜まっていた歯磨き粉も飲み込んでしまった。げほげほと咳き込みながら、あわててうがいをする。
(でも近藤さん、おれはどっちのアンタも好きだかんな)
 りりしい局長としての近藤も、自分の前でだけ見せてくれる男の顔をする近藤も、土方にとっては選びようがないかけがいのないものなのである。


07.02.23
*ぞっとするおはなし。