穴を掘る
 土方は穴を掘る。屯所の庭の真ん中に、自分の身長よりもずっと深い穴を掘る。 穴を掘っている最中、缶に入ったエロ本が数冊見つかったので、それはもれなく燃やしておいた。そして穴掘りを再開する。
 すっかり夢中になって穴を掘っていると、夕方には予定していた程度の深さまで達することができた。 土方はスコップを投げ出し、額に流れる汗を拭ってから、用意していた梯子で穴の外に脱出した。 穴の上に薄い板を置いて、その上に板が見えなくなるくらいに草や土で覆ってしまう。 隊士にはあらかじめ「あそこには近づくな」と注意を呼びかけておいたので、他の者が落ちる心配はないだろう。
 やがて城に行っていた近藤が帰宅する。土方は上機嫌で彼を出迎えた。至れり尽くせりだ。
 夜中、屯所内に悲鳴が轟いた。布団のなかでうずうずとしていた土方はその声を聞くなり即行で起き上がり、庭に飛び出した。
「近藤さん、だいじょうぶか!」
 ばりばりと割れた板の間から穴の下を覗き込むと、草や土だらけになった近藤が転がっているのが見えた。
「いま助けに行くからな!」
 土方はひょいっと穴の中に身を投じ、近藤の上に着地した。
「うぐぉッ……トシ……!」
「近藤さん!」
 これでふたりっきりだ。
 隊士にはあらかじめ「何があってもしばらく近づくな」と注意を呼びかけておいたので、他の者に邪魔をされる心配はないだろう。


07.02.20
*ぞっとするおはなし。