名刀虎鉄ちゃんに嫉妬する
虎鉄ちゃんを手に入れてからというもの、近藤はあまり自分にかまわなくなったと土方は思う。鼻歌混じりに刀の手入れをする近藤を、土方は恨みがましい眼差しで見ていた。そんな視線すら近藤は気づかないのだ。まったく、なんてことだ!
ある日土方は近藤のいない隙を狙って、そっと虎鉄ちゃんを持ち出した。ひとけのない神社の裏側に身をひそめる。まるでかくれんぼをしているみたいだ。
(おれを捜しに来るかそれとも)
土方はくちびるを噛みしめる。それとも――。
そのとき、聞き慣れた声が遠くのほうから聞こえてきた。土方ははっと身を強張らせた。足音は近くなり、近藤が目の前に現れたのはそれからすぐのことだった。
「トシ」
はやく帰るぞ。差し伸べられた手を土方はおそるおそるつかんだ。近藤は土方の思惑などとうにお見通しなのだ。ちょっとだけ悔しかったが、嬉しかったのも事実。
屯所へ帰ると、近藤が手招いて自分の膝をぽんぽんと叩いてみせた。
「こっちへ来い」
土方は呼ばれるままに近藤の膝の上に座る。
「一緒にこいつをきれいにしてやろう」
丹念に虎鉄ちゃんの手入れをしてやりながら、土方は無意識に鼻歌を唄っていた。
07.02.19
*ぞっとするおはなし。