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土方はふてくされていた。両の手のひらをあわせて頭を下げている近藤をチラとひと目見て、またぷいとそっぽを向く。
「トシ、ごめんって!」
「……べつに、もういいって」
「ほんとごめんな。だっておまえ、呼んでも気づかなくて、なんか書きものしてるからなにかなーと思ってのぞきこんでみたら、俺のなまえがちょうど見えて、だから気になって」
「いいって。べつに怒ってないからもう顔をあげてくれ」
日記をのぞかれたことを怒っているのではない。はずかしいだけなのだ。よりによって近藤のなまえが書いてあるところを読まれてしまった。いや、そもそも日記には近藤のことしか書いてないのだから、どのページのどの部分を見られてもけっきょくはマズイのだ。
土方はため息をついた。文章を読まれなかっただけマシだ。そう思うことにしよう。土方は無理やり納得づけた。
「トシ、日記っておもしろいか?」
「……おもしろいっていうか」
おれの場合は観察日記といったほうが正しいんだけどな。とは言えずに土方はあいまいにうなずいてみせた。
「俺も日記つけてみようかな」
「アンタが? つづくのか?」
「む。んなこと言うなら交換日記でもしてみるか?」
「こ、こうかん、にっき」
毎日顔をあわせているのに、いったいなにを書けばいいのか。というよりも大の男ふたりが交換日記というのはありなのか。
戸惑う土方に、近藤はにっこりと笑う。
「ふだん言えないことでも、交換日記だったら言えるかもしれないだろう?」
(だったらおれのページはアンタへの愛でいっぱいになっちまうよ)